AI前提の経理は、会計ソフトを「APIが開いているか」で選ぶ

読了 約5分 たび

このシリーズでは、バクラク・国税庁・会計ソフトのAPIで経理の作業をAIに任せてきた。3本書いて見えたのは身も蓋もない事実だ——AIがどれだけ賢くても、システムにAPIが無ければ何も触れない。AI前提で経理を回すなら、ツール選定の軸が変わる。見るべきは機能でも価格でもなく、「現場が自分で叩けるAPIが開いているか」だ。

たびたび

AIの手足はAPIだ。頭がよくても、手が届かなければ作業はできない。だからツールは“開いてるか”で選ぶ。

AIの限界は“頭”じゃなく“手”

生成AIは賢い。でも、あなたの会計システムのデータを勝手に取ってきて書き戻すことはできない。そこにAPIが無ければ、結局は人が画面をポチポチするしかない。AIの賢さは、APIが無ければ宝の持ち腐れになる。

選定軸は「機能」から「開かれたAPI」へ

これまでは機能・価格・サポートで選んできた。AI前提なら最優先で見るのは「AIが触れるAPIを、現場の自分たちで叩ける形で開いているか」。機能が多くてもAPIが閉じていれば、AIは仕事を手伝えない。

大手ERPは「APIが無い」のではなく「自走で叩けない」

誤解されがちだが、大手のクラウドERP(SAP・NetSuite・奉行クラウド等)はAPIを持っている。問題はその先だ。多くの基幹システムやオンプレ環境では、API連携がSIer頼み・iPaaS前提・権限とコストの壁で、経理現場が自分でサッと叩ける状態にない。レガシーなオンプレに至っては、そもそも外から触れないことも多い。

ここが論点

「APIの有無」で切ると雑になる。正確には“現場が自走で叩ける形に開かれているか”。APIがあっても、ガバナンスやSIer経由でロックされていれば、現場には“無い”のと同じだ。

「APIがある」だけでは足りない——4つの落とし穴

APIが公開されていても、次のどれかに引っかかると実用にならない。

  1. 従量課金:呼ぶほど・人数が増えるほど課金。例えばMFは基本3名まで、4名以上は1名 月300円〜、AI-OCRは101件目から1件20円。NetSuiteはAPIの同時実行数を増やすのに有償ライセンスが要る——スループットを金で買う構造だ。
  2. 使えるモジュールの制限:肝心の機能だけ非対応、がある。MFは請求書・経費・給与・債務支払のAPIは公開だが、クラウド会計のAPIはクローズド(士業パートナー限定)。「周辺は開いてるのに本丸が閉じてる」型だ。
  3. 操作の制限読み取りだけ可・書き込み不可、一部項目しか触れない、というケース。「取得はできるが登録できない」だと、AIに作業させる用途では片手落ちになる。
  4. プラン・件数の上限:低プランはリクエスト数や件数に上限。MFは請求書APIが低プランで各帳票100リクエスト、ひとり法人は仕訳500件/年。freeeもレート制限はある(ただし通常の自動化なら回る範囲・読み書き可)。

だから

「APIあります」を額面で受け取らない。従量課金・対応モジュール・読み書きの範囲・レート上限まで見て初めて“AIで回せるか”が分かる。導入前に開発者ドキュメントで必ず確認を。

国産クラウド会計:freee と MF の決定的な差

ここは感覚ではなく、公開仕様の差で語れる。

  • freee:会計APIを公開していて、freeeアカウントがあれば誰でもアプリ登録してすぐ使える(事前許可なし・OAuth2)。仕訳や取引を読み書き両方できる=AIに会計作業を任せやすい。レート制限はあるが通常の自動化なら回る範囲だ。
  • マネーフォワード(MF):請求書・経費・給与・債務支払のAPIは公開しているが、クラウド会計のAPIは一般公開されていない(クローズド/士業パートナー限定)。さらに公開APIも低プランはリクエスト数・仕訳件数に上限があり、人数に応じた従量課金も乗る。

注意:仕様は変わる

MFが劣るという話ではない(会計以外のAPIは充実している)。“会計データそのものをAIに触らせたい”という今回の文脈で、現状はfreeeが有利、という意味だ。API公開範囲・料金は各社の最新ドキュメントで必ず確認を。

今後、APIの公開度が“標準”になる(見立て)

AIで生産性を出すのが当たり前になれば、会計APIを閉じたツールは選ばれなくなる。そうなればベンダーも開く方向に動かざるを得ない。だから今、「現場が叩けるAPIが開いているか」でツールを選ぶのは、将来への投資だ。AI前提の経理は、もう始まっている。

まとめ

AIの手足はAPI。AI前提で経理を回すなら、ツールは「機能」より「現場が叩けるAPIが開いているか」で選ぶ。大手ERPはAPIはあるが自走の壁、国産クラウドなら会計APIを開いている freee が現状有利。これがAI時代の選定軸だ。

このシリーズで言いたかったのは結局これだ。AIに任せられる範囲は、AIの賢さではなく、あなたのツールがどれだけ“開いているか”で決まる。

参考(公開情報)