会計ソフトのAPI比較|AI経理で確認したい4つの選定基準

読了 約9分 たびすけ
API連携を基準に会計ソフトを選ぶ記事のアイキャッチ

「マネーフォワード クラウド会計のAPIは一般利用できない」——AIに経理作業を任せる前提で会計ソフトのAPIを比較したとき、私はそう整理していました。それが、2026年7月17日に公式情報を確かめ直したら、もう古くなっていたんです。いまは利用者向けに公開されていて、追加料金もかかりません。

公開範囲もひかえめではありません。仕訳の取得、作成、更新、削除ができて、試算表、マスター、証憑まで扱えます。freee会計のほうには、OAuth 2.0で取引や振替伝票などを読み書きできるPublic APIが以前からあります。「APIが使えるのは片方だけ」という前提は、もう成り立たないわけです。

比較の結論は、こうやってこちらに知らせもなく古びていきます。だから私は、会計ソフトを「APIあり」の1項目で選ぶのは危ういと思うようになりました。確かめたいのは有無ではなく、いまの契約と権限で必要なデータを読み書きできて、その結果まで検証できるかです。

APIの有無だけでは自動化の範囲は決まらない

見るのは、利用条件、扱えるデータと読み書きの範囲、件数や同時実行や料金の制限、書き込み後の検証方法の4つ。公開範囲はあとから変わる。製品名で優劣を固定せず、導入する時点の公式ドキュメントで確かめる。

連載「経理をAIに任せる」(全4回)

  1. 経理AIの内部統制をどう設計する?作業・責任・監査証跡の分け方
  2. 新規取引先チェックをAIで自動化|閉鎖・合併済み法人を検知した方法
  3. 経費精算のレシート照合をAI-OCRで自動化|分割計上も検知
  4. 会計ソフトのAPI比較|AI経理で確認したい4つの選定基準(この記事)

振り返ると、この連載の3つの実践も、申請の取得、公式情報との照合、証憑の取得、結果の整理を、全部APIでつないでいました。裏を返せば、接続先からデータを取り出せなかったら、AIがどれだけ賢くても、同じ流れは作れなかったはずです。

AIは会計データまで自力では届かない

生成AIは、会計ソフトの中のデータへ勝手にアクセスできるわけではありません。APIやMCP、許可された画面操作といった、外部システムとつながる手段が別に要ります。

ただ、APIが公開されているだけでは、まだ足りません。認証したユーザーに必要な権限がなければ、取得も更新もできないからです。会社として利用を認めるのか、誰の権限で動かすのか、書き込みをどこまで許すのか——このあたりは、製品を選ぶより先に決めておく話です。

NetSuiteやSAPのような大手ERPにも、APIそのものはあります。それでも、現場ですぐ使えるとは限りません。契約や権限、連携基盤、SIerとの役割分担まで整えて、ようやく使える状態になることもあります。

会計ソフトのAPIを比べる4つの基準

接続と権限まで含めて考えていくと、比べる項目はだいたい絞れてきます。私が確認しているのは、この4つです。

基準確認する内容見落とした場合
利用条件対象プラン、アプリ登録、認証方式、必要権限APIがあっても自社では利用できない
操作範囲必要なデータ、読取・作成・更新・削除取得後の登録だけ手作業で残る
制限と費用日次件数、レート、同時実行、追加ライセンス件数が増えたときに処理が止まる
検証と統制ログ、権限分離、dry-run、更新後の再取得誤更新の発見と説明ができない

機能表の丸印を数えても、自社で使えるかどうかは分からないんですよね。なので、自動化したい業務を1つ選んで、この4つに当てはめてみます。仕訳を任せたいなら、「仕訳APIあり」で止めないことです。対象年度の仕訳を取得できるか、作成や更新に対応しているか、必要な補助科目を扱えるか、誰の権限で認証するか、更新後に再取得して確かめられるか。そこまで見て、やっと比較と呼べる状態になります。

freee会計APIは契約プランで使える範囲が変わる

freeeで見落としやすいのは、使えるAPIや項目が契約プランで変わる点です。認証はOAuth 2.0で、会計APIには取引、振替伝票、取引先、勘定科目、経費精算、支払依頼など、取得と更新の両方に対応したエンドポイントがそろっています。

上限も契約で違います。公式リファレンスに載っている事業所とアプリケーションごとの1日上限は、法人エンタープライズが10,000回、法人アドバンスが5,000回、それ以外は3,000回です。総勘定元帳APIのように、対象プラン自体が限られる機能もあります。

つまり「freeeなら全部使える」という話ではなくて、必要なエンドポイントをいまの契約で使えるかどうかを、1本ずつ見ていくことになります。一方で、一般の開発者でも公式リファレンスとアプリ登録から検証を始められるので、自分で試すハードルは低いほうだと思います。

いつの間にか一般公開になっていたマネーフォワード会計API

私の整理をひっくり返した側の、マネーフォワード クラウド会計です。いまの公式案内では、クラウド会計や確定申告の利用者なら、士業でも個人事業主でも法人でも、APIを利用できます。追加料金もかかりません。

操作の範囲もかなり広いです。仕訳の取得、作成、更新、削除のほか、取引明細の作成や証憑の保存と添付ができます。貸借対照表、損益計算書、月次推移、勘定科目、部門、取引先といったマスターまで扱えます。認証はOAuth 2.0とAPIキーによる方法が、開発者サイトで案内されています。

それと、AIツールから会計データを扱えるMCPサーバーも用意されています。APIとMCPは向いている用途が同じではないので、定期バッチや他システムとの連携にはAPI、AIと対話しながら確認する場面にはMCP、という使い分けになると思います。

過去の比較記事をそのまま選定資料にしない

マネーフォワード会計APIのように、公開範囲はあとから変わることがあります。検索で見つけた記事や社内の比較表に「未公開」と残っていても、契約前には公式の機能ページ、開発者ドキュメント、料金案内で確かめ直してください。この記事は2026年7月17日時点の情報を確認しています。

NetSuiteは同時実行の上限がライセンスと連動する

大手ERPの例としてNetSuiteを見ておくと、こちらはWebサービスの同時実行の上限が、サービス階層とSuiteCloud Plusのライセンス数に連動しています。必要なAPIがそろっていても、大量処理や複数の連携を同時に動かすつもりなら、アカウント全体の上限と割り当てを確かめてからでないと始められません。

これは「大手ERPは使えない」という意味ではありません。権限管理や同時実行の制御が細かいぶん、現場で小さく試すまでの調整も増える、ということです。処理量の多い企業では、むしろその統制や拡張性のほうが必要になります。

製品名ではなく、業務を1つ通した結果で決める

freeeもマネーフォワードも会計APIを公開しているいま、製品名だけで「AI経理に向いているのはこちら」と決めるやり方は、もう成り立ちません。私が候補を比べるなら、1つの業務を次の順で通してみます。

  1. 自動化したい業務を1つ選ぶ
  2. 必要な取得項目と書き込み項目を洗い出す
  3. 検証環境または読み取り専用でAPIを試す
  4. 件数上限、権限、追加費用、更新後の確認方法を記録する
  5. 例外時に止まり、人の確認に戻せることを確かめる

この5つは、APIの公開状況がまた変わっても、そのまま使えます。冒頭の「一般利用できない」という整理がひっくり返ったように、比較表の中身はこれからも動くはずです。でも、業務を1つ通して確かめる手順のほうは動きません。AIに任せられる範囲を決めるのは、モデルの性能だけではなくて、接続先がどこまで公開されていて、自社がどの権限を与えられるか、なんです。

ただし、APIで処理できることと、AIに承認の責任まで渡してよいことは、別の話です。作業と証跡をどう残すか、例外や人の承認をどう扱うかは、連載の最初の記事に書いています。

経理経理AIの内部統制はどう設計する?作業と責任、証跡の分け方経理業務をAIに任せても、承認する人の責任まで移るわけではありません。新規取引先と経費精算の実例から、入…

2026年7月17日に確認した公式情報